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2012年4月19日 (木)

高齢受刑者の病死

最近,授業,教務,原稿その他もろもろで忙しくて,書きたいことは山ほどあるのですがなかなか書けません.

「富山刑務所(富山市)で2月、病死した70代の男性受刑者をめぐり、同刑務所の外部委員会が17日までに、刑務所側が十分な医療措置を取らなかったと指摘する意見書をまとめた。

委員会によると、受刑者は昨年6月に入所する前から高血圧症や糖尿病の持病があった。今年1月から脳梗塞の後遺症で自力では食事を取れなくなり、刑務官らが介助していた。2月5日夜、容体が悪化し病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認された。3月に刑期満了の予定だった。

同日午前中から異変の兆候があったが、同刑務所が救急車を要請したのは午後10時半ごろ。意見書は「直ちに救急車を要請すべきだった」と指摘した。

同刑務所は昨年11月から常勤の医師は欠員の状態。同刑務所は「再発防止に努めたい」とコメントした。」産経MSN

たとえ高齢で要介助者であるといっても,刑を執行中の受刑者を刑務所から外に出すというのは容易ではなかったのでしょうか?この時に医師がいたのかどうかは文面では分かりません.看護師や准看護士の資格をもつ刑務官が付き添っていたのかもわかりませんね.

前にも書きましたが,某累犯刑務所の養護工場を見せていただいた時は,その高齢者の多さにびっくりしました.この人たちはシャバに戻っても仕事をすることは難しいだろうし,十分な年金も無い人が多いだろうし,介護保険もかけていない人もほとんどだろうし,などと考えると結局生活保護に頼らざるをえない人たちなのかなぁと思いました.富山刑もB級(累犯)刑務所ですね,この亡くなった方も養護工場だったのでしょうか?

以前,受刑中全く視力を失った人の対応をしたことがありましたが,それでも懲役刑なので毎日出役していました.LAやLBの長期刑務所ともなれば,車いすで介助する指導補助などとよばれる経理夫に車いすを押してもらって出役する人もいるそうです.

刑務所では,介助する受刑者とされる側が1対1で単独室に2人独居で入る完璧なケアを受けていたりすることもあるそうですが,そのような状態になっても刑執行はされるのですね.

ちなみに,下記は刑訴での刑執行停止の条件です.

刑訴第480条:心神喪失の状態に在るときは,その状態が回復するまで刑の執行を停止 する.

刑訴第482条:懲役,禁錮又は拘留を受けた者に対し,以下の事由があれば,検察官の裁量による刑の執行停止ができる.

1.刑の執行によって,著しく健康を害するとき,又は生命を保つことのできないおそれがあるとき.

2.年齢七十年以上であるとき.

3.受胎後百五十日以上であるとき.

4.出産後六十日を経過しないとき.

5.刑の執行によって回復することのできない不利益を生ずるおそれがあるとき.

6.祖父母又は父母が年齢七十年以上又は重病若しくは不具で,他にこれを保護する親族がないとき.

7.子又は孫が幼年で,他にこれを保護する親族がないとき.

8.その他重大な事由があるとき.

かなり古い規定なんでしょうが,2だけ当てはめるとすごいことになりますね.70歳以上の受刑者なんてすごい数だと思います.ただ,この亡くなった方の場合,1と2おそらく5も該当するような気がしますね.

条文的には要介護高齢者や幼い子がいる受刑者は刑執行停止になってしまいますが,現在は生存権が規定され福祉の体制が一定ととのっているので,6や7の事情での刑執行の停止はないんでしょうね.もっとも生存権は受刑していてもある意味守られているのですが...

ただ,今回のような介助がないと生活できない人の刑の執行というのは考えさせられますね.憲法では残酷な刑罰は禁止されていますが,これは残酷な刑罰にならないのかとも思ったりもします.その反面,殺人事件や性犯罪などで被害者や遺族の処罰感情が峻烈で「死ぬまで刑務所から出すな」と思っている場合などはどうなのかとも思えますし...

今は,仮釈放や仮退院の許可についての地方更生保護委員会での審理の際,被害者や遺族が仮釈放や仮退院に関する意見や被害についての心情を述べられることになっています.この意見等が仮釈放や仮退院の許可の判断や保護観察における特別遵守事項の決定にあたって考慮されることになっています.刑の執行停止についてもそういう制度があってもいいような気がします.

もちろん,受け止める社会の福祉や医療の体制の整備と社会の包摂の姿勢が十分でないといけないのは言うまでもありません.

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