佐世保市の高1女子同級生殺害事件に思う①
佐世保市で起きた高1女子同級生殺害事件の報道で日本中が震撼しています.もっとも報道がすべて本当の事であるかどうかは分かりません.報道は捜査側の発表が元になっていますし,被疑者は少年ですから発表できないことも多々あるでしょう.捜査の関係で報道できないこともあるかと思います.ですので,報道されていることをそのまま鵜呑みにできません.
しかしながら,殺害後遺体を刃物で損壊しているという異常な犯行態様の事件であることは間違いなく,動機も報道では「人を解剖したかった」というもので,少なくとも怨恨とかとは全く違う,かなり変わった動機であるようです.これまでの報道では被疑者の医学モデル面での異常さが強調されている一方で,計画性にも触れていて,責任能力について問題がないということも捜査側から強調されているようです.
今後,逆送されて刑事処分なのか,それとも家裁の審判で保護処分となるのかは分かりませんが,責任能力がある以上は矯正施設での処遇がなされるのが順当でしょう.特別な処遇が必要となれば,逆送された場合は医療刑務所,少年院だと医療少年院ということになるのでしょう.たとえ少年院送致としても神戸連続児童殺傷事件と同じように5年などの特別に長い処遇期間になるかと思います.
勿論,愛娘を同級生に殺害されたご遺族の皆さん方は悲嘆にくれ,被疑者を憎むのは当然です.心情的には出来るだけ重い刑罰を科してほしいと思うのは無理もありません.ご遺族のケアは当然ですし,級友たちのケアも必要でしょう.加害者側の家族もケアが必要なのではないでしょうか.
例えば,この加害者が心身に何らかの障がいを負っていたとします.では,福祉としてどう対応できるのでしょうか?この場合は,少年への対応としてまずは,少年審判に向けての入口支援として,ソーシャルワーカーが付添人に就き,加害少年との関係を形成して更生支援をするという形が考えられます.長崎県で起きた事件ですが,少年事件の守秘性や刑事手続きの違いなどを考えると障がい者調査支援委員会といった組織での対応ではなく,一般的なフォレンジック・ソーシャルワークでないと対応できません.
大きな事件ですし,すでに当番弁護士の接見,被疑者弁護人の選任というかたちで動いていると思いますが,医学モデル的な障害だけにとらわれるのではなく,生活モデル的な障がいにも目を向けていくべきだと思います.報道されているものだけでも,家族への暴力,不登校など様々な生活支障がありますし,そもそもこの犯罪自体が生活支障,社会行動障がいとしてとらえられます.そこには司法的な働きかけでは不十分です.家裁の調査や鑑別だけでも十分ではないでしょう.それは,更生を考えなければいけないからです.
是非,すばらしいフォレンジック・ソーシャルワーカーに対応をしていただき,2度とこういったことが起きないようにしていただきたいと思います.
最後に,ご遺族の皆さんには,加害者の動向を逐一ありのままに知らせることは少年であっても必要だと思います.よく加害側の人権ばかりを守るということが言われますが,そうであってはいけません.もの言えぬ被害者とご遺族の人権も守る必要があります.そして,忘れてはいけないのは加害者家族の人権も守らなければなりません.
大きな課題のある事件だと感じています.
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コメント
事件当時15歳ということですし、医療少年院というところでしょうかね・・・。報道でしか分からないんですが、他人とコミュニケーションが取れにくかったとか、狭い範囲にしか興味示さないとか・・・、まるで発達障害みたいだなと感じましたよ。実は私も発達障害と診断されていますが、今回の少女がもし発達障害だとしたら、なんと言われるか・・・。その辺が心配でたまりません。今回の事件は、色んな要因が重なって起きた悲劇的な事件ですから、是非とも原因の解明をして欲しいと願っています。
投稿: なつみかん | 2014年7月30日 (水) 18時15分
コメントありがとうございました.こういう事件が起きると「識者」という方が発達障がいを持ち出すのでいつも嫌な思いをします.
確かに,発達障がいのある人のごく一部の方が人の痛みが分かりにくかったり,残酷なことを理解するのが困難だったりなど犯罪に結びつくことはありますが,極めてレアケースです.発達障がいのあるひとはそれこそ山ほどおられるわけで,その中のごく一部の人が犯罪をするわけです.発達障がいだから犯罪をするというのは科学的にも裏付けはありません.そういうことをちゃんと社会に伝えないままに,発達障がいを持ち出して広めるマスコミも困ったものだと思っています.
投稿: 原田和明 | 2014年7月31日 (木) 16時57分